30人の壁とMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の作り方

30人の壁とMVVのイメージ

「30人の壁」という現象

会社が成長し、社員が増えていくにつれて、創業者・経営者の考えや熱量が、社員一人ひとりに届きにくくなる現象がある。これは一般に「30人の壁」と呼ばれている。

社員数が少ないうちは、社長の言葉が直接社員に届き、価値観も自然に共有される。しかし組織が大きくなるにつれて、間接的に伝わる情報が増え、伝言ゲームのように少しずつニュアンスが変わっていく。気づけば、部署ごとに「うちの会社らしさ」の解釈がバラバラになっている、ということが起きる。

MVVとは何か

この壁を乗り越えるために有効とされるのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の設定・見直しだ。経営学の文脈では、ミッション経営や目標管理を提唱したピーター・ドラッカーらの議論を源流のひとつとしながら発展してきた考え方で、企業の共通の価値観を表す手法として、現在多くの企業で活用されている。

MVVを設定・浸透させることで、社員全員が同じ情熱を持ち、同じ方向に向かって走れるようになる。それだけでなく、次のような場面でも指針として機能する。

  • 事業判断や評価制度の指針になる
  • 採用で求める人材像を明確にできる
  • 新規事業や新サービスの是非を判断する基準になる

MVVをブランドのピラミッドで捉える

ミッション・ビジョン・バリューを示すMVVピラミッドモデル

MVVは、それぞれ役割の異なる階層として整理すると分かりやすい。ブランドキャラクターを頂点に、次のようなピラミッド構造で捉えることができる。

ブランドキャラクターとは、企業や団体を擬人化して、顧客を含めステークホルダーから見てどのような人格か、を決めておくものだ。「うちの会社を人にたとえるなら、どんな性格の人か」を言語化しておくと、MVVの各階層で判断に迷ったときの拠りどころになり、社内のコンセンサスがさらに取りやすくなる。

ミッション:社会における存在意義

  • 社会の課題を解決できているか
  • 持続可能な使命になっているか
  • どんな価値を創造し続けるのか

ビジョン:中期のありたい姿・未来への羅針盤

  • どんな会社、どんな組織になりたいか
  • 自社だけでなく、顧客・社会にとって価値ある存在か
  • 社員は夢を感じ、ともに歩みたいと思えるか

バリュー:ミッション・ビジョンを達成するための規範/行動指針

  • ミッション・ビジョンを実現するために、日々どう判断し、どう行動すべきか
  • 現場が判断に迷ったとき、拠り所になる基準になっているか
  • 全社員が共有できる、具体的で分かりやすい規範になっているか

にわとりと卵の関係

MVVを考えるうえで重要なのは、企業のブランドと顧客の関係が「にわとりと卵」のような相互作用にあるという点だ。

顧客は、企業が掲げるBI(ブランド・アイデンティティー)そのものに直接反応しているわけではない。企業が立案した事業戦略の結果としてもたらされる、社会的な効果・結果に反応している。

つまり、ブランドの価値を最終的に決定するのは顧客であり、その顧客の動機を理解することが、MVVを実効性あるものにする鍵になる。掲げるだけのスローガンで終わらせず、事業戦略・顧客分析・競争戦略と接続させて初めて、MVVは機能する。

中小企業がMVVに取り組む意味

大企業の壮大なミッションステートメントを真似る必要はない。中小企業がMVVに取り組む本質的な意味は、次の2点にある。

1. 少人数のうちに「共通言語」を作っておく 30人の壁が来る前、あるいは来た直後にMVVを言語化しておけば、組織拡大に伴う価値観のズレを最小限にできる。

2. 採用・評価の判断基準として機能させる 「うちらしい人材とはどういう人か」「評価すべき行動とはどんなものか」を、感覚ではなく言語化された基準で判断できるようになる。中小企業ほど採用のミスマッチが経営に与える打撃は大きいため、この効果は無視できない。

まとめ

  • 「30人の壁」は、組織拡大とともに経営者の価値観が伝わりにくくなる現象
  • MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の設定・浸透が、この壁を乗り越える有効な手段
  • MVVはピラミッド構造で捉えると整理しやすい(ミッション→ビジョン→バリュー/行動指針)
  • 顧客との関係は「にわとりと卵」であり、事業戦略・顧客分析と接続して初めて機能する
  • 中小企業こそ、少人数のうちにMVVという共通言語を持つ価値が大きい